高齢に伴う運動機能低下
高齢になると確実に体力や運動機能が低下します。なぜでしょうか。
運動能力は身体を支える組織がしっかりしていないと衰えます。筋組織、腱、関節、骨、内臓…
栄養をしっかりと摂り、常日頃運動を行うことである程度の維持が可能となります。
高齢者の体力低下の原因の一つに摂食量の低下が挙げられます。
特に肉類を敬遠し、あっさりとした軽い食事で済ませてしまいがちです。
その結果、栄養を必要量摂ることができず、栄養不良、更には栄養失調状態になっていきます。
タンパク質であるアルブミン
アルブミンは585個のアミノ酸からなり、分子量66,000のたんぱく質の一種です。語源は「卵白」を意味する<albumen>。
血液中や乳汁にも存在し、栄養状態のバロメーターになります。
摂取されたアミノ酸他を原料として肝臓実質細胞で合成されます。
100mg~200mg/kg/Day
血漿アルブミン
血漿中にアルブミンが存在することで膠質浸透圧が維持されます。
これにより、血管の外の組織間液を血管内に取り込もうとする作用が生じます。
つまり、血管内の水分を保持する大切な役割を果たしているのです。
血管内のアルブミンが不足すると、水分が血管外に逃げるため「浮腫」(むくみ)が生じます。
血漿アルブミン(Alb)の基準値は
基準値:3.8~5.3g/dl
基準値を下回れば栄養不良、栄養失調状態と言えます。
その他、疾患による肝機能異常やタンパク漏出、激しい運動による消費量の増加の場合もあります。
特段の疾患もなく、血漿アルブミン値の低下が有れば、栄養状態に問題があると考えられます。
血漿アルブミン値と余命
低アルブミン状態と生存率の低下には関連性があるとも研究結果が有ります。
低アルブミンの状態を放置することで、長くは生きられないということになります。
アルブミン値と疾患との関連性
たんぱく質は脳細胞や脳血管の構成成分でもあります。
当然、低栄養状態では脳の機能に悪影響を及ぼすことは想像できると思います。
認知機能低下のリスクが増加します。脳血管障害(脳梗塞等)や心疾患(心筋梗塞等)等のリスクも当然増加します。
筋力の低下はサルコペニアの原因となります。
高齢者にこそ必要な「肉食」
たんぱく質を摂取することはとても大切です。肉、魚、豆類等、たんぱく源は色々とあります。
高齢になると、どうしても肉類を避けて魚や豆腐を好みます。ご飯や麺類のような食べやすい炭水化物を主に摂取する高齢者も多いと思います。
肉類を敬遠する理由は何でしょうか。
①食欲がわかない
②肉が噛めない
③コレステロールが気になる
④メタボになる
①は老化に伴う自然な現象かもしれません。動物には死期が有り、身体自体にその機能が有ります。
②機能的な問題なのです。歯は重要です。
③④誤った知識を持ち続けています。40代50代世代で引き起こる問題を70代80代にまで持ち越しています。


1日あたりのたんぱく質摂取量
運動をする人、しない人、性別、年齢によって異なります。
軽めのトレーニングを行う人の場合、体重(kg)当たり1.2g~1.4gほど必要と言われます。
体重が50kgの人の場合、
50kg×1.2~1.4g/kg=60~70g
となります。
糖分の補給が大切
糖質(炭水化物)はエネルギー源であるばかりでなく、たんぱく質から補給されるアミノ酸を効率的にたんぱく質に再合成するために必須な栄養素です。
糖質が足りないと、たんぱく質の分解が促進し、効率的な筋力アップの妨げとなります。
高齢者でも筋力の維持には、軽い運動、必要量のたんぱく質の摂取、糖質の摂取が必要なのです。


