アルツハイマー病とアミロイドβ
アルツハイマー病はアルツハイマー博士が記憶障害のある女性の脳を調べて、脳の委縮やシミ、脳神経の糸くずのようなもつれ(神経線維の変化)を発見したことから発見に至りました。
脳のシミ(老人班)を構成している物質はでアミロイドβというたんぱく質です。通常のアミロイドβは排泄されますが、アルツハイマー病ではアミロイドβが生産される量が多い状態であり、蓄積されてしまいます。
神経線維の変化は蓄積したアミロイドβにより神経線維が傷ついた状態です。
アルツハイマー病になり易い人、なりにくい人
アルツハイマー病は遺伝的な要素が強い疾患であることがわかってきました。それは、アポリポたんぱくE(ApoE)との関連性からわかってきました。
ApoEはHDLやLDLなどのリポたんぱく質の構成要素の一つです。ApoEを産生する遺伝子は3つ存在し、それぞれApoE2、 ApoE3、 ApoE4という3つの型(部分的なアミノ酸の違い)のたんぱく質が産生されます。
ApoE3は正常型と言われ、ApoE4はアルツハイマー病の危険因子で発症確立を格段に増加させます。
ApoE2は逆に発症リスクを低下させることがわかってきました。なお、ApoE2は高脂血症の原因となるといわれます。
遺伝子を受け継ぐパターン遺伝子は両親から受け継ぎます。ApoEの産生遺伝子のパターンは…
ApoE2/E2、ApoE2/E3、ApoE2/E4、ApoE3/E3、ApoE3/E4、ApoE4/E4
の6パターンが考えられます。その中の4パターンの発症リスクのデータが有ります。80歳までにアルツハイマー病に罹患する確率は以下の通りとのことです。
ApoE2/E2 (5%より低い?)
ApoE2/E3 5%
ApoE3/E3 10%
ApoE2/E4 17%
ApoE3/E4 (17%より高く25%より低い?)
ApoE4/E4 25%
ApoE2はリスクを下げ、ApoE4はリスクを上げ、ApoE3はどちらでもないとすれば、こんな順位でしょうか。
しかし、ApoE4遺伝子を持っていない人もアルツハイマー病に罹患していますし、ApoE4遺伝子を持っていても罹患しない人も存在するので、あくまでApoE4はリスク要因ということになります。
ApoE4遺伝子を持って更に長生きした場合、発症確立は更に増加することでしょう。
遺伝子治療のトライアル
アルツハイマー病のリスクを下げるApoE2遺伝子をウイルスに移植し、脊髄に注入する臨床試験が計画されているようです。
サルでの実験ではApoE2遺伝子の拡散が確認され、ネズミの実験では脳内アミロイドβ量の減少が確認されたとのことです。


