ダイエット法について考える

ダイエットの語源
古代フランス語で「食事療法」の意味の「diete」、ギリシャ語で「生活様式」を示す「diaita」に由来し、13世紀に英語「diet」が登場。当時は「食事」「一日分の食糧」の意味を含んでいました。日本においては歴史は新しく、『ヤングレディ』(1973年)という雑誌の記事に、「グラビア ダイエットメニューつき・美しくやせる週刊スケジュール巻頭」の表題があったそうです。そのころから、痩せるまたは太らない食事療法・食事制限として認識されたようです。
どんなダイエットを目指すのか?
ダイエットはもともと食事療法の意味であったようですが、美しく痩せる目的では運動療法との組み合わせを考えるのが一般的でしょう。ただ、運動が苦手な人も多く、何とか楽して痩せたい!と考える人が多数存在していると思います。企業広告でも「楽して痩せる」「我慢しないで痩せる」ことを前面に出すことで、売れ行きを上げている節もあります。では、どのようなダイエットで美しく痩せることができるでしょうか?
ダイエットの大前提としての運動
食事療法と運動療法の組み合わせは必須であると考えます。運動はカロリー消費のみならず、健康な身体機能に必要な骨や筋肉、内臓機能の維持には不可欠であり、どれを欠損しても健康かつ美しくは生きられないからです。運動といっても、激しく身体を消耗する必要はありません。歩く、動く日常動作を惜しまず、更に適度な運動(身体への負荷)を加えることを習慣とすれば十分と考えます。

ダイエットのゴール地点を考える
ダイエットのゴールはどこでしょうか。適正な体重またはBMIでしょうか?人間の身体は一般的に以下の成分で構成されています。
(年齢によって変化します。)
男 | 女 | |
水 | 60% | 55% |
たんぱく質 | 18% | 14% |
脂質 | 16% | 26% |
糖質 | 0.5% | 0.5% |
無機質 | 5.5% | 4.5% |
女性は脂質が多い分、水分量が少ないです。男性は筋肉量が多いのでたんぱく質の割合も女性より多くなっています。炭水化物は消化され、体内では糖質として存在しています。
この成分の構成割合を保った状態で、かつ身長から導かれる理想体重であれば、理想的で適正な身体ということが言えます。
逆を言えば、単に体重が理想体重に一致するだけではダメなのです。その人はもしかしたら必要な筋肉が脂肪分に置き換わっているかもしれません。その場合は見た目の体形が理想とは異なっていることでしょう。

脂肪組織について
脂肪組織は皮膚の内側(皮下層)と内臓の周囲に存在しています。いわゆる皮下脂肪と内臓脂肪です。食事によるダイエットでは皮下脂肪に比べ、内臓脂肪の減少効率が良いと言われています。さて、内臓脂肪が溜まった状態で血糖、血圧、脂質のうち2項目以上に異常があればメタボリックシンドロームと診断されます。
内臓脂肪の蓄積 | ||
ウェスト周囲径 | 男性85cm以上 | 女性80cm以上 |
血糖 | ||
空腹時血糖値 | 110mg/dL以上 | |
血圧 | ||
収縮期血圧 | 130mmHg以上 | かつ/または |
拡張期血圧 | 85mmHg以上 | |
脂質 | ||
トリグリセリド値 | 150mg/dL以上 | かつ/または |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 |
メタボリックシンドロームは動脈硬化を引き起こし、更に脳梗塞、心筋梗塞、心不全、糖尿病及び糖尿病合併症に進行していきます。
今、流行の炭水化物制限ダイエットは?

炭水化物を知る
炭水化物は基本単位である単糖類で構成された物質全般を指しています。単糖類が2つ以上結合したものを多糖類といいます。多糖類は結合する単糖の数や種類、結合形態により、多くの種類があります。
代表的な多糖類に、デンプン(更にアミロース、アミロペクチンに分類される)、セルロース(植物の構成成分)、グリコーゲン(動物の貯蔵多糖)、キチン(含窒素多糖高分子、N-アセチルグルコサミン、グルコサミン等を構成成分に含む)、ペクチン、ヒアルロン酸、ヘパリンなどがあります。
炭水化物の吸収
炭水化物を含む代表的な食品として、ごはん(米、麦)、パン(小麦)イモ類、麺類、糖類などが挙げられます。
これらは消化管で分解され、最終的には単糖類(グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトースなど)となり、主に十二指腸から小腸より吸収されます。
炭水化物の体内での役割
炭水化物は糖質として吸収されたのち、必要な量のエネルギー源として使われます。その他、アミノ酸や脂肪酸の合成に利用されます。
余剰な糖質はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵されますが、貯蔵量には限界があり、更に余剰な分は脂肪に変換され、脂肪組織に取り込まれます。ここがポイントです。炭水化物の過剰摂取は肥満の原因の一つです。
炭水化物制限ダイエットの経験
炭水化物制限ダイエットは効果があります。これは自分自身で実証しました。当時61kgほどあった体重を約3か月で52kgまで落とせました。
この時はたんぱく質を十分に摂るとともに、中程度の運動を併せて行いました。ただ、この方法は若干筋肉への負担が大きいので、もう少し緩やかに、一年計画で行うくらいがベターだと思います。

炭水化物の過剰制限
では、炭水化物を完全に遮断した場合はどんなことになるでしょうか。
外部からのエネルギー源が減少すると、脂肪組織、貯蔵グリコーゲンをエネルギー源とせざるを得ないため、体重は明らかに減少します。糖質の燃焼は効率的で即効性があるので、炭水化物の過剰制限下では疲労回復に時間がかかるでしょう。また、糖質が足りないと筋肉を構成するたんぱく質がエネルギー源に回されます。
結果、筋力が低下します。筋肉の材料となるたんぱく質やアミノ酸を補給しても、筋肉の再構成が困難な状況となり、回復ができない状況に陥るでしょう。たんぱく質は筋肉のみならず、臓器や血管を構成するための栄養素なので、健康な身体機能が失われる危険性があります。
本来の炭水化物制限ダイエットを目指しましょう!
以上のように、炭水化物の摂取制限には限度を設ける必要があります。日常生活で必要なエネルギー源はしっかりと炭水化物の補給で補う必要があります。
特に脳や赤血球はグルコース由来のエネルギーが必須であるため、欠乏させないことが必要です。炭水化物の補給は筋肉の維持には不可欠です。
運動前にグリコーゲンを補給し、運動後(特に一時間後が効率的)にたんぱく質またはアミノ酸と炭水化物(または糖類)を補給することで、筋肉量の維持あるいは増加が可能です。要するに…
必要以上の炭水化物摂取制限はしないこと。
必要以上に炭水化物を摂取しないこと。
一見矛盾するように思えますが、前述の説明から理解できると思います。理想的に美しく痩せるためには、筋力を維持しつつ過剰な脂肪分をゆっくりと消費することと思います。

超危険なダイエット!
シンデレラ体重!?

どうしても若い女性では、たとえ自身が標準体重であってもより細く軽くなりたいと望んでしまう場合があります。標準体重はBMIが22の時の値で、次の計算で導かれます。
標準体重 = 身長(m) × 身長(m) × 22
(身長160cmでは56.32kg)
この標準体重ではなく、更に美容体重と言われるものがあります。
美容体重 = 身長(m) × 身長(m) × 20
(身長160cmでは51.2kg)
更に美容体重から10%差し引いたものがシンデレラ体重(モデル体重)とのことです。
シンデレラ体重 = 身長(m)×身長(m)×20×0.9
(身長160cmでは46.08kg)

オルトレキシアとは
あるフランス人女性が過剰な健康志向によりベジタリアンとなり、更に卵や乳製品、蜂蜜なども食べないビーガンとなり、生の食材しか食べないローフード主義者になり、最後はフルーツしか食べない状況となり、髪の毛が抜け落ち始めました。
これは自分で良かれと思ったルールに縛られる摂食障害の一つで、「オルトレキシア・ナーボウサ」と呼ばれます。このルールを守ることは一種の病的な強迫観念と言われます。男性よりも女性の方が2倍以上の確率でオルトレキシアになりやすいと考えられています。
過剰なダイエットは精神が蝕まれます。。。
過剰なダイエットにより身体の脂肪分のみならず、筋力の低下を招くような事態となった場合、精神にも影響が出てきます。痩せることによる安心感や太ることに対する恐怖感が摂食障害の一因となります。
脳は本来大量のエネルギーが必要な臓器であり、血中のグルコースが補給源となります。栄養が足りない状態ではエネルギー補給ができないばかりか、神経細胞自体へのダメージ、回復困難へとつながります。
その結果、抑うつ、無気力、判断力の低下、不眠、不安、強迫観念など、様々な症状が出てきます。


