食物繊維の効果
食物繊維は消化吸収されずに消化管を流れていくので、一見栄養学的にも役に立っていないように見えます。
ところが、食物繊維を摂取することで、ヒトは多くの恩恵を受けることができます。
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咀嚼回数を増加させ、唾液の分泌を促す。
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消化管運動を活発にする。
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糖質・脂質の消化管吸収を減少・遅延させる。
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胆汁酸の量を減少させる。
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腸内残渣の通過速度を上昇させる。
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腸内細菌叢を適正に保つことができる。
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便通を向上させ、便容量を増大させる。
食物繊維の摂取により改善が期待できる疾患
食物繊維を十分に摂取することで疾患リスクが軽減されるというデータがあります。オタゴ大学の研究では脳卒中リスクを22%軽減、2型糖尿病、大腸がんのリスクをそれぞれ16%軽減、冠動脈性心疾患による死亡リスクを30%減少するとの結果でした。
大腸がん、動脈硬化、胆石など
糖尿病・肥満など
食物繊維で心臓病リスクが低下
米国ハーバード大学の研究において、食物繊維を多く摂ることにより心臓病による死亡リスクが15%減少し、更に最も多く摂るヒトにおいては、最も少ないヒトに比べリスクが25%減少する、との報告がされています。
また、心筋梗塞を発症した経験のあるヒトが、その後食物繊維の摂取量を増加させることで、死亡率が31%減少したとの報告も有ります。
前立腺がんとの関連性
国立がん研究センターにおいて、食物繊維の1日あたりの摂取量を4段階に分けて前立腺がんの発症との関連性を調査した研究が有ります。
自覚症状で発見された前立腺がんと食物繊維の摂取との関連性において、食物繊維及び不溶性食物繊維の摂取量が最も少ないグループ以外において、進行前立腺がん(前立腺組織を超えて広がった進行がん)のリスク低下が認められました。
逆を言えば、食物繊維の摂取が少ない場合、前立腺がんのリスクが上昇するとも言える結果です。
前立腺がんのリスクを上昇させる因子にIGF-1と性ホルモンが有ります。
IGF-1とはインスリン様成長因子1といい、前立腺がんの細胞増殖を促進します。
男性ホルモンも同様にがん細胞の増殖因子になります。
食物繊維のインスリン感受性改善効果によるIGF-1低下作用や性ホルモンへの影響が関連しているものと考えられます。


食物繊維の多い食品
穀類 |
玄米、胚芽米、麦飯、トウモロコシ |
豆類 |
大豆、小豆、うずら豆、納豆、おから |
イモ類 |
サツマイモ、サトイモ、蒟蒻 |
野菜 |
牛蒡、フキ、セロリ、アスパラガス、キャベツ、白菜、青菜 |
果物 |
柑橘類、バナナ、ウリ |
キノコ類 |
椎茸、シメジ、エノキ |
海藻類 |
ワカメ、寒天、ところてん |
インフルエンザの予防にも効果
食物繊維の摂取により免疫力が高まります。ビフィズス菌等の腸内細菌(善玉菌)と併用することにより、よりパワーを発揮します。
食物繊維は消化吸収されにくいため、腸内細菌のエサにもなり、その代謝産物が炎症やアレルギーを抑制する効果が有るとも言われます。
その結果インフルエンザや風邪に罹患しにくい身体となります。

