インフルエンザウイルスの種類
インフルエンザウイルスには大きく分けて3つの型が有ります。それはA型・B型・C型。
インフルエンザA型、インフルエンザB型はよく聞きますが、インフルエンザC型はあまり馴染みが有りませんね。
ヒトではインフルエンザC型が流行することは、ほとんどないと言われています。
香港型とソ連型
香港型、ソ連型は聞いたことがあると思います。
香港風邪は1968年に香港から爆発的に流行し、東南アジア、東アジア、オーストラリアからアメリカまで伝播しました。中国が源ではないかと言われ、6万人近くが死亡しています。
また、1977年に中国から始まり、シベリアからロシア一帯、ヨーロッパ、また、アメリカや南米各国、オーストラリアで伝播したのがソ連風邪です。勿論、日本でも流行しました。
香港型とソ連型のウイルス型
1968年の香港風邪のウイルス型はH3N2型(新型のパンデミックで死者100万人以上)でした。
1977年のソ連風邪のウイルス型はH1N1型(青年のみに感染したので非パンデミック)です。
他にも1918年に流行したスペイン風邪はH1N1型(新型のパンデミック)で、感染者は5億人、死者は5000万人とも1億人とも言われます。
1957年のアジア風邪はH2N2型(新型のパンデミックで死者200万人以上)、記憶に新しい2009年の新型インフルエンザはH1N1型(新型のパンデミックで死者1.4万人)でした。
ウイルス型について
インフルエンザのA型・B型・C型の違いはウイルスを構成するタンパク質(構造たんぱく質、核タンパク質)の違いによります。
タンパク質が異なると抗原性が異なってきます。抗原性が異なると抗体との反応性が異なってきます。
A型ウイルスのワクチンはB型ウイルスには効果が有りません。交差性が無いとか、交差反応しない、と表現されます。
インフルエンザの亜型とは?
ウイルスには膜状の構造があり、エンベロープと呼ばれます。
エンベロープの表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)いう糖タンパクが有ります。
インフルエンザのヘマグルチニンには16種類のサブタイプが存在します。同様にノイラミニダーゼには9種類のサブタイプが存在します。
このサブタイプの両者の組み合わせによる抗原性の違いがインフルエンザの亜型ということになります。
つまり亜型は理論上H1N1からH16N9まで144種類存在することになります。
インフルエンザの株とは?
更に亜型にも微妙な内部構造の違いが有ります。株はウイルスが分離された場所と年代等によって命名されます。
A、B、C等の属/分離された生物種/場所/順番/年度(1999年までは下2桁、2000年以降は4桁)
冬シーズンのワクチン株
A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2)
B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
B/Maryland(メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)
こんな感じです。「pdm」はパンデミック、即ち世界的に大流行したことを示します。
ワクチン株は2015/2016冬シーズンよりA型2種類とB型2種類、それ以前はA型2種類とB型1種類でした。
2018-2019年シーズンは?
このシーズンの立ち上がりはA/H1N1pdm09という、かつてパンデミックした新型ウイルスが季節型となった亜型が多いようです。
ワクチン株にも入っているので、ワクチンの効果は有りそうです。A/ H3N2はやや少ないようです。
B型は山形系統が3.1%、ビクトリア系統が0.8%(第45週まで)とのことです。
感染症の発生状況については国立感染症研究所のホームページに詳しい情報があり、参考になります。
インフルエンザの予防
インフルエンザワクチン
インフルエンザの予防にはインフルエンザワクチンの接種が一番でしょう。
効果は接種後2週間から抗体が増え始め4週間後にピークになります。
3か月~5か月間、効果が持続し、その後低下し始めます。
分離株も毎年変化しますので、毎年接種する必要が有ります。
2019-2020シーズンの株(追記)
A型株:
A/ブリスベン/02/2018(H1N1)pdm09、A/カンザス/14/2017(H3N2)
B型株:
B/プーケット/3073/2013(山形系統)、B/メリーランド/15/2016(ビクトリア系統)
全額自己負担で成人で3000~5000円ほど。13未満は2回接種で平均6000円ほどです。
65歳以上の高齢者または60歳以上で呼吸機能や免疫機能に障害がある人の場合、自治体より一部公費負担(補助)がでます。
その他の予防方法
その他の予防対策
インフルエンザの治療
国内で使用されているインフルエンザ治療薬です。
成分名 | 商品名 | 剤型 | 用法 |
オセルタミビル | タミフル | カプセル・ドライシロップ | 1日2回5日経口 |
バロキサビル | ゾフルーザ | 錠 | 単回経口 |
ザナミビル | リレンザ | 吸入 | 1日2回5日吸入 |
ラニナミビル | イナビル | 吸入 | 単回吸入 |
ペラミビル | ラピアクタ | 静注 | 単回注射 |



鳥インフルエンザについて
鳥インフルエンザは本来鳥を宿主とするA型インフルエンザウイルスですが、ヒトに感染し強毒化することが有ります。
家禽であるニワトリや七面鳥からヒトへの感染報告が有ります。
日本でもヒトへの感染は有りませんがニワトリ、ウズラ、オオハクチョウ、カイツブリ、カモ、ナベヅル、クマタカ等から分離されています。
H5N1とH7N9
H5N1は東南アジア、中国、中東、アフリカでヒトへの感染が報告されています。1997年に香港で死者がでました。
2005年にも東南アジアで死者が発生しています。症状は高熱、急性呼吸器症状を主とするインフルエンザ症状、呼吸窮迫、頻呼吸、呼吸時の異常音、肺炎が多く見られます。
H7N9は中国でヒトへの感染が報告され20013年に上海で死者が出ました。
高熱、急性呼吸器症状、下気道症状、重症肺炎に至ることが有ります。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状や二次感染、脳症、横紋筋融解症に進展した例が有ります。
発症から死亡まで7~20日と強毒性です。
予防は鳥との接触を避けること、生きた鳥が売られている市場や養鶏場にむやみに近寄らないこと、頻回の手洗いです。
期待のファビピラビル
インフルエンザ治療薬であるファビピラビル(商品名アビガン錠)は通常のインフルエンザには使用できません。
万が一、新型ウイルスがパンデミックした時に使用する薬で、適応は。。。
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)
となっています。
国がインフルエンザ対策に使用する必要があると判断した場合にのみ、使用が検討されます。
マダニによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)にも効果があるとされ、臨床試験が行われています。
またアフリカのギニアで発生したエボラ出血熱に対しても効果があったとの報告が有ります。
