イソチオシアネート
イソチオシアネートは-N=C=Sという構造を持つ有機硫黄化合物全般を示しています。例えばアリルイソチオシアネートは
CH2=CH- CH2-N=C=S
という構造をしていますが、これはからし、ワサビやマスタードの辛味成分です。
アブラナ科の野菜であるダイコンにもイソチオシアネートが数種類含まれており、4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートが主要なものです。
因みにダイコンの成分のグルコシノレートが同じくダイコンの皮に多く含まれる成分であるミロシナーゼという酵素と反応してイソチオシアネートが生成します。ダイコンはおろすと辛くなりますね。
スルフォラファン
フィトケミカルであるスルフォラファンもイソチオシアネートの一種です。アブラナ科の野菜であるブロッコリーなどに含まれています。
通常は前駆物質であるスルフォラファングルコシノレートとして存在していますが、ブロッコリーを口に入れて歯で咀嚼するときに、同じくブロッコリーに含まれる酵素であるミロシナーゼと反応してスルフォラファンに変化します。
スルフォラファンについてはこちらも参考にどうぞ。
フェネチルイソチオシアネート
アブラナ科の植物であるキャベツやクレソン(オランダガラシ)にはフェネチルイソチオシアネートというイソチオシアネートが含まれています。前立腺癌等のがんに対する抗がん作用が現在研究されています。
ベンジルイソチオシアネート
同じくキャベツやクレソン、パパイアの種(アブラナ目パパイア科)にベンジルイソチオシアネートというイソチオシアネートが含まれています。
また、アブラナ科の根菜類であるマカの有効な辛味成分でもあります。マカは天然のバイアグラなどともいわれ、強い滋養強壮作用や持久力の強化、特に男性の精力アップに効果あるとされ、サプリメントも多く出ています。
また、女性に対してもホルモンバランスの乱れによる生理不順、不妊、更年期障害、冷え症や肌荒れなどの改善効果があるといわれています。
アブラナ科の植物
アブラナ科の植物には前述のダイコン、キャベツ、ブロッコリー、クレソンの他、白菜、小松菜、カリフラワー、チンゲン菜、芽キャベツ、カイワレ大根、からし菜、菜の花、ケール、ルッコラなどがあります。
イソチオシアネートの効用
死亡リスクの低減
国立がん研究センターの日本人を対象とした「JPHC研究」において、アブラナ科野菜の摂取量が最も多いグループの全死亡リスクは、最も少ないグループと比較し、男性では14%、女性では11%低いことが明らかになりました。
がん予防効果
イソチオシアネートのがん予防効果について研究がされています。イソチオシアネートはDNA損傷の原因となる発がん物質の排出を高める作用が報告されています。
国立がん研究センターの研究では、アブラナ科野菜の摂取量が多い男性の非喫煙者で肺がんリスクが51%低くなること、過去喫煙者でも肺がんリスクが41%低くなることが示されました。
動脈硬化の予防効果
イソチオシアネートには抗酸化作用があることから、活性酸素を減少させる働きがあり、動脈硬化の予防効果があるとされています。
また活性酸素を減少によるアンチエイジング効果も期待されます。
その他期待される作用
食欲増進、消化不良改善、血栓予防、抗菌作用があるとされます。


フィトケミカルについて
フィトケミカルは植物中に含まれる化合物で、特に健康に役立つ成分を意味しています。例えばヤナギの樹皮から単離されたアスピリンもフィトケミカルに相当します。
果物や野菜の色素や辛味成分はフィトケミカルであり、体内では抗酸化物質として作用します。例えばトウモロコシの黄色色素のルテイン、トマトの赤色色素のリコピン、ニンジンのオレンジ色色素のカロテン、ブルーベリーの青色色素のアントシアニンなどがあります。

分類 | 名称 | 含まれる植物 | 機能・効果 |
ポリフェノール | アントシアニン | ブルーベリーなど | 抗酸化作用 |
イソフラボン | 大豆など | 更年期障害改善・骨粗鬆症予防 | |
セサミノール | ゴマなど | 抗酸化作用・動脈硬化予防 | |
クルクミン | ウコンなど | 抗酸化作用・抗炎症作用・肝機能改善 | |
有機硫黄化合物 | スルフォラファン | ブロッコリースプラウトなど | 抗酸化作用・解毒作用・がん予防 |
アリシン | ニンニクなど | 抗酸化作用・動脈硬化予防 | |
テルペノイド | ルテイン | ホウレンソウなど | 抗酸化作用 |
リコピン | トマト・スイカなど | 抗酸化作用 | |
リモネン | 柑橘類 | 抗酸化作用・抗アレルギー作用 | |
フィトステロール | 植物油 | コレステロール減少 | |
糖関連化合物 | β-グルカン | キノコ類 | 免疫力向上 |
サポニン | 豆類・穀物・ハーブ | 血糖値上昇抑制活性 | |
アルキルフェノール誘導体 | カプサイシン | トウガラシ類 | 体熱生産作用 |
ギンゲロール | ショウガ | 体熱生産作用 |