新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では多彩な血栓症の発症が見られ、多くの犠牲者が出ています。また、感染予防の切り札である新型コロナワクチンの接種でも副作用として血栓症の発症があり、アストラゼネカ社のワクチン(現段階で本邦未承認)について、EUでは30歳未満について接種規制(他のワクチンを推奨)がなされています。
なぜ新型コロナウイルス感染やワクチン接種で血栓症ができるのでしょうか?その原因として「免疫血栓」と呼ばれる現象が考えられます。
コロナに関連して血栓ができる理由を考察してみます。
原因の本命は「免疫血栓」…か?
免疫反応について
ヒト(のみならず生き物全般)の身体は外部からの異物の混入に対する防御機構が備わっています。これが免疫機能です。免疫機能は異物を外に排除するための機構であり、免疫細胞やサイトカインと呼ばれる物質をはじめ、様々な機能が働きます。
これら一連のアクションは「免疫反応」と呼ばれます。例えば、熱が出たり、関節が痛くなったり、倦怠感が出る原因はザックリ言えば「免疫反応」が身体の中で起こっている、と言っても過言ではありません。
免疫血栓とは?
新型コロナウイルス感染症のみならず、一般的に細菌やウイルス感染が引き金となり血栓が形成されやすくなることがわかっています。これが「免疫血栓」です。
免疫機能の一端を担う白血球に血液凝固に必要な血小板や凝固因子が相互に働きあって、血液が固まり易くなる環境が形成されていきます。これは生体防御反応の一種で、血栓を形成することで感染症から身を守るためのものと考えられています。
血小板同士が凝集することはよく知られていますが、細菌やウイルスを捕食する好中球に血小板が結合したり、同じく細菌やウイルスを捕食する肝臓のクッパー細胞に血小板が結合したりします。
通常の血栓との違い
通常健常なヒトであれば擦り傷などで怪我をして出血すると、しばらくして自然に血が止まります。血液凝固機構より止血されるためです。これは血管内というより血管外での損傷を様々な組織因子で止血する機構になります。
感染症の場合は、血管外ではなく血管内の血管内皮細胞という細胞の指令で同様の止血機構が血管内で働きます。しかし、血管内で発生した血栓は厄介なことに全身にいきわたり、色んな部位で血栓症を起こし、血液の流れを悪くし、やがては細胞を壊死させてしまうリスクが有ります。
COVID-19による血栓症
肺血栓
肺血栓は死亡リスクの高い血栓症です。深部静脈血栓のみならず、肺動脈にも発症するようです。
脳梗塞、急性冠症候群
静脈血栓、動脈血栓ともにみられるとのことです。脳梗塞では動脈血栓が多いようです。ともに死亡リスクの高い血栓症です。
微小血管内血栓
細動脈、細静脈、毛細血管などの微小循環系に生じた血栓は重篤な臓器障害を発生させ、多臓器不全に陥れば死亡リスクが上昇します。
新型コロナワクチンによる血栓症とは?
そもそもワクチンとは異物である細菌やウイルスそのもの(生ワクチン)や死骸や一部の構成要素であるタンパク質など(不活化ワクチン、RNAワクチンなど)を敢えて体内に入れることで免疫反応を起こさせるものです。
当然、免疫反応が起こりますので、発熱や頭重、関節痛、倦怠感が発症します。免疫血栓も低い確率ですが発生します。これらは副作用と認識されますが、逆に言えば免疫反応が起こり、目的とする抗体の産生が始まっているとも言えます。
若年者に多い副作用発現
実は副作用は比較的若い人に発現しやすいのですが、若年者は免疫機能がしっかりと働いており、逆に高齢者は免疫機能が低下しているためではないかと考えられます。しかしながら、新型コロナ感染症に比べてワクチン接種量はほんの僅かであり、ゆっくりとした免疫反応が起こるのが一般的です。
逆に新型コロナ感染症では体内で爆発的にウイルス量が増加するため、免疫反応も激しく、サイトカインの過剰に放出されるサイトカインストームによる細胞破壊で死に至る場合が有るのです。


