新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の経緯と問題点をまとめつつ、今後の終息の方向性、可能性を考察してみます。
新型コロナウイルス感染拡大の経緯
SARS-CoV-2抗体が無い人への感染
2020年当初、新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)に対する免疫(IgG抗体)を保有する人は誰もいませんでした。
2019年11月に中国武漢市で発生したSARS-CoV-2が日本に上陸し、2020年1月に日本初のCOVID-19が確認されました(中国武漢市からの帰国者)。
当時は海外からの入国規制などはなく、その後散発的に市中感染が確認され始めました。
2020年2月にクルーズ船の乗客に感染者が確認され、その後クルーズ船内でのクラスターが確認されます。
SARS-CoV-2の感染力は強く、SARS-CoV-2抗体を持たない人は容易に接触または飛沫感染することが明らかになりました。
その後、日本各地でも市中クラスターや院内クラスターが発生し、多くの感染者が発生し始めます。
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新型コロナウイルスの正体と抗体
コロナウイルスには色々な種類が有ります。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどんなウイルスでしょうか。 抗体による感染予防、免疫治療は可能なのでしょうか? 一番の関心事は抗体の強さでしょう。 ...
PCR検査の実施と問題点
政府は2020年1月に「帰国者・接触者外来」の設置を要請し、体制の構築が始まりました。
地区町村の保健所が窓口となり、一定の基準を満たした人についてのみ公的負担によるPCR検査が始まりました。
しかし、PCR検査の実施可能件数には限りがあり、結果的にSARS-CoV-2陽性であった人たちが検査を受けることができないケースが多発しました。
そのために治療を受けることができず、悪化し死亡する例も発生しています。
PCR検査についてはことらも参考にしてください。
疲弊する医療機関
各都道府県ごとにCOVID-19に対応する指定医療機関が定められ、対応が始まりました。
もともと感染症病棟が有る訳でなく、一般病棟を陰圧室を備えた感染者専用病棟に変えるといった対応がとられました。
専門知識を持ったスタッフが多いわけではなく、スタッフの育成も不十分なまま有志を募って対応する医療機関も多いと聞き及びます。
重症患者を受け入れるには人工呼吸器やECMOといった医療機器が必要となります。
結果的に重症例を受け入れ可能な施設が限られ、そのような施設で軽症~中等度の患者を受け入れてベッドを占有することはできず、増加する患者に対応することが困難な状況に陥っていきます。
ECMO
患者数増加により、指定医療機関以外の医療機関もSARS-CoV-2陽性患者を受け入れざるを得ない状況となり、にわか仕立ての感染者専用病棟で軽症~中等度の患者を受け入れることとなります。
2020年3月6日よりPCR検査の公的医療保険の適用が開始されました。
医療資材の不足
全国的にマスク需要が高まり、マスク不足が社会問題化しました。
勿論、医療機関に回るサージカルマスクも不足し、SARS-CoV-2陽性患者に接触するうえで最も重要なN95マスク、フェースシールド、予防衣、グローブなどの資材不足の問題が発生しました。
資材の再利用や心ある人々からの寄付により何とか診療が継続されているといった状況です。
転売問題
溢れるSARS-CoV-2陽性患者への対応
指定医療機関に加え、一般の医療機関の対応により、SARS-CoV-2陽性患者の受け入れ病床が増加したとはいえ、患者の増加スピードに病床数が追いつきません。特に都市部においては深刻な状況となっています。
2020年1月に指定感染症に指定されたSARS-CoV-2陽性患者は医療機関への入院が必須です。しかし、医療機関が飽和状態となったため、軽症者においては民間ホテルや自宅療養を行うことが認められました。
自宅療養における問題点
民間ホテルには少人数ながら対応する医師、看護師が存在するため、重症化した場合、速やかに医療機関へ入院することが可能です。
しかしながら、自宅療養の場合、病状を自らの判断で観察しなければなりません。
中には判断を誤り、重症化し手遅れとなったケースも発生し始めています。
また、家族との同居による家族内感染も社会問題となっています。
特に子育てが必要なSARS-CoV-2陽性患者は自らの療養に専念できないばかりか、子供への感染との恐怖と戦うこととなっています。
COVID-19の終息の可能性は?
COVID-19の治療薬とワクチン
COVID-19の治療薬が少しづつ見つかってきました。
詳しくはこちらを参照してください。
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新型コロナウイルスに治療効果のあるとされる医薬品
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治療薬はあくまでも発症後への対応であり、最も期待されるのはワクチンによる予防です。
ワクチンが開発され、集団接種により集団免疫を獲得することこそ、COVID-19との戦いに勝利することとなります。
ワクチン開発の可否も課題ですが、問題は抗体の有効性です。
抗体の有効性に与える因子
抗体の体内での寿命
インフルエンザワクチンの例
インフルエンザワクチンを考えてみましょう。季節性インフルエンザワクチンは毎年接種していませんか?
なぜかと言えば、季節性インフルエンザには大きくA型とB型が有り、更にそれぞれに複数の型が存在するからです。
毎年、どの株が流行するかを事前に予測し、次シーズンのワクチンが生産されています。
ワクチンにはA型2株、B型2株の計4株の不活化ウイルスが入っています。
また、インフルエンザ抗体は摂取後2週間から1か月後に抗体が生産され、約半年後から抗体価が減少し消えていきます。
こういった状況により毎年接種が推奨され、更にワクチン接種をしても感染するケースが有るのです。
なので、インフルエンザについては集団免疫による有効性は期待できません。
詳しくはこちらを参照してください。
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麻疹・風疹ワクチンの例
インフルエンザとは異なるのが麻疹・風疹ワクチンです。
麻疹・風疹の抗体は100%では有りませんが生涯免疫と言って、一度獲得した免疫(抗体)は一生涯有効となります。
麻疹・風疹については集団感染するケースはわずかです。
過去に法定接種が受けられなかった世代で蔓延するケースが時折見受けられる程度で、予防接種を受けた人が罹患することはありません。
集団免疫が非常に有効な例です。
風疹についてはこちらを参照してください。
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免疫に関する考察
SARS-CoV-2陽性患者は陰性化後2週間で社会復帰可能です。
彼らはSARS-CoV-2抗体(IgG抗体)を保有していますので、再感染する可能性は極めて低いものと考えられます。
感染後に無症状であり、PCR検査を受けることなく、感染者としてカウントされないまま陰性化する人も少なからず存在します。
彼らは自然免疫の獲得者です。ニューヨーク州での調査においてPCR陽性者の約10倍ほどが真の感染者(抗体保有者)であるとの結果でした。
詳しくはこちらを参照してください。
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自然免疫の獲得は感染による重症化のリスクもあり、推奨できるものでは有りません。
しかし、そのようなケースで免疫を獲得する人が今後も増えていくものと考えられます。
PCR検査問題との関連性
日本のPCR検査件数が少なすぎる、もっと多くの人に検査をするべき、との世論が有ります。
一方で、仮にそうした場合、PCR陽性者が一気に増加し、医療機関、ホテル療養、自宅療養者が増加することとなります。
重要なことは以下ではないでしょうか?
重症化する可能性のある感染者を速やかに特定し治療すること。
無暗にPCR検査をするのではなく、症状を見ながら可能性のある人は社会生活を自粛して感染拡大を防止すること。
明らかな症状がある人は積極的にPCR検査を受けて、必要な治療を受けること。
現在、日本で行われている検査体制は比較的リーズナブルではないか?また、今後医療機関内でのPCR検査の実施が増加するのではないかと、私は考えています。
(NG)感染の可能性があるにもかかわらず社会生活を持続すること。
これらの行動を見直し、必要に応じてPCR検査を行うことで、ある程度の軽症者は自然免疫を獲得していくのも一つではないかと考えます。
新型コロナウイルスとの戦いは長期戦であり、恐らくウイルスを根絶することは不可能であると思います。
ならば、共存していく他に道は有りません。インフルエンザウイルスと戦いながら共存していることと同じです。
しっかりと予防することをしなければいけませんが、罹患することも想定し、しっかりとした治療体制を整えるのです。
そのためには医療機関の体制も整える必要が有ります。
少なくとも今回のパンデミックから、現在の体制では余裕を持って満足な医療を提供することはできないことが証明されました。
今後、医療機関自体がPCR検査機器を導入し、疑いのある入院患者などに対し、積極的にPCR検査を実施していく体制を取ることが予測されます。
PCR検査を希望する患者のためというより、院内感染を防ぐための医療機関の防衛策としてです。
地域医療構想の今後への影響
厚生労働省が進めている地域医療構想をご存じでしょうか?
地域医療構想は2025年問題に対応する目的で医療機関の機能分化を明確にし、地域のかかりつけ病院や在宅医療を充実させる方策です。
2025年問題
地域医療構想では規模の大きな医療機関の病床数が全体的に削減され、医療機関の規模や特徴に応じて専門医療を提供することとなります。
恐らく、感染患者への医療の提供は一部の専門の医療機関が担うこととなると思いますが、病床数は限られたものとなるでしょう。
厚生労働省が病床削減を含めた規模の縮小や廃止が必要な医療機関名を一方的に公表し、都道府県から激しい反発が有ったことは、つい最近の出来事になります。
現在、COVID-19の蔓延により各医療機関が一般病棟を改編して感染病棟として対応していますが、病床数自体が現在より減少するため、今回のようなパンデミックが再び起こった場合、益々対応が困難な状況となる可能性が有ります。
また、ICUの数は10万人当たりで日本は5床です。米国は約35床、ドイツは約30床、フランス及びイタリアは約12床、スペインは約10床です。
この点も、削減ではなく、今後増床していく必要があるのではないでしょうか?

内部リンク
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