日本のPCR検査実施件数が世界各国に比べて少ないと言われています。
最近新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原検査が注目され、富士レビオという会社から検査キットの薬事承認が申請されています。
抗原検査とはどんな方法でしょうか。PCR検査や抗体検査との違いを紹介します。
抗原と抗体
身体の防御機構として免疫反応が有ります。
免疫反応とは外部から侵入した異物(抗原となるもの)に対し、体内で抗体が産生され抗原を排除するための機構のことです。
抗原:免疫応答を引き起こす物質
抗体:抗原を排除するために産生される各種の免疫グロブリン
抗原抗体反応の利用
抗原抗体反応を利用した医療としてワクチン接種や減感作療法が有ります。
ワクチン接種
ワクチン接種の目的は、弱毒化あるいは不活性化した抗原を体内に入れることによって免疫反応を引き起こし、体内に抗体を産生させることです。
強毒性の抗原(細菌やウイルス等)が体内に侵入した際、抗原が排除され、感染症の症状が出ないか、あるいは軽微になります。
減感作療法
特定の物質に対しアレルギーを持つ患者に対し、希釈した抗原を体内に入れることによって免疫反応を引き起こし、体内に抗体を産生させます。
抗原の濃度を徐々に高くして、身体を慣れさせていくイメージです。
アレルギーの原因物質が体内に侵入しても、アレルギー症状が出ないか軽微に終息します。
抗原検査とは
抗原検査のメリット
新型コロナウイルスの場合、ウイルスの表面にあるタンパク質の断片を検出する検査になります。
PCR検査ではターゲットとなる遺伝子の量が極めて少量であるため、増幅作業(量を増やすこと)が必要であり、増幅には手間と時間を要します。
しかし抗原検査ではターゲットとなるタンパク質をそのままの状態で検出すること可能であるため、手間がかからず検査時間が短いメリットが有ります。
抗原検査のデメリット
抗原検査は測定時間が短い反面、精度に関してはPCR検査に劣ると言われます。
陽性反応が出れば陽性患者であることは確定されますが、陰性の場合、中には陽性者が含まれる可能性が有ります。
疑いが強ければ、再度PCR検査で確認することが推奨されます。
PCR検査についてはこちらを参照してください。
抗原検査の利用
簡便かつ検査スピードが早いことはやはり重要で、感染者を特定するための一次検査としては有用であると考えられます。
多くの患者がいる医療機関において、症状からの疑い患者や手術や検査前の患者に対する感染確認にとして手軽に用いられますし、感染にハイリスクな高齢者施設や介護施設でも幅広く活用できそうです。
ただ、検査精度がやや劣るので陽性患者を検出することに特化した検査方法と言えます。
抗原検査陽性 → 100%陽性者
抗原検査陰性 → 陽性/陰性かは不確定 → 要PCR検査
抗体検査との違い
抗原検査/PCR検査と抗体検査は目的が全く異る!
SARS-CoV-2に感染すると、早い段階でIgM抗体が検出され、約1~2週間時間が経つとIgG抗体が検出されます。
症状が発症し始めた時点では抗体産生は始まったばかりで、抗体は検出されません。
抗原検査やPCR検査はウイルス自体を検出する方法なので、現在の感染状況を知ることが目的になります。
一方、抗体検査は過去において感染したことの有無、感染歴を調べることが目的となります。
抗体を持つ人が増えることで集団免疫の獲得となり、感染の蔓延を防ぐこともできます。
SARS-CoV-2抗体についてはこちらを参照してください。
集団免疫についてはこちらを参照してください。
内部リンク
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