増加する肺炎による死亡
日本人の死因として、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が上位に挙げられます。
しかしながら、平成23年以降、肺炎が死因の第3位に急浮上し始めています。
詳しくはこちらを。
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日本人の疾患による死因を考えてみる
現在の疾患による死因 日本人の死因として挙げられる三大疾患は皆さんご存じですね。 三大疾患 悪性新生物(がん) 28.7% 心疾患 15.2% 悩血管疾患 8.7% 2015年(平成27 ...
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死因第三位の疾患~肺炎~
肺炎を起こす原因は様々あります。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も症状の悪化により肺炎を起こします。 肺炎を起こすとどうなるのか? 肺炎を起こすことで体内に酸素が取り込めな ...
加齢に伴って免疫力は徐々に低下してしまいます。栄養状態が悪いと、特に免疫力低下が顕著になっていきます。
加えて、今世界で大問題となっているのが「薬剤耐性菌」の出現です。
肺炎を含む細菌感染症は、抗菌薬の投与により通常改善をするのですが、薬剤耐性菌は抗菌薬が効かないため、細菌が身体の中でどんどん増殖し、敗血症(血液の感染症)まで至ると、死亡率がかなり高まってしまいます。
薬剤耐性菌についてはこちらを。
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抗菌薬が効かない!増加しつつある耐性菌感染症
人類は感染症を克服した? 日本人のかつての死因は感染症でしたが、抗菌剤の開発や衛生意識の向上で、近年は減少していることを先日の記事で記載しました。 日本人の疾患による死因 ...
肺炎球菌について
肺炎球菌は肺炎や中耳炎の原因菌です。
正式名は肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)と呼ばれる、グラム陽性双球菌です。
市中肺炎では最も多い原因菌であり、乳幼児の急性中耳炎の原因菌としても有名です。
全身感染症である細菌性髄膜炎は最も重篤な疾患で、かなり死亡率が高まります。
一般的にはペニシリン系の抗菌薬やセフェム系の抗菌薬が使用されますが、もう少し強力なカルバペネム系の抗菌薬や海外では耐性菌であるMRSA治療薬のバンコマイシンが使用されることもあります。
肺炎球菌ワクチンについて
国内で承認されている肺炎球菌ワクチンは、次の二種類が有ります。
ニューモバックスNP
販売会社:MSD
成人用肺炎球菌ワクチンであり、23価不活化ワクチン。
高齢者への定期接種(65歳以上の5歳刻み)については公的補助有り。
プレベナー13
販売会社:ファイザー
小児および高齢者用肺炎球菌ワクチンであり、13価の不活化ワクチン。
公的補助はなし。
肺炎球菌ワクチンの効果
予防接種をしたところで、肺炎球菌ワクチンにはどれほどの効果が有るのでしょうか。

多くの臨床研究結果が出ているのですが、それらのデータを総合的に分析(メタ解析といいます)したところ、未接種の場合と比較して、発症率を74%減少させたとの結果が有ります。
100%ではありませんが、それでも十分に効果はあり、4人に3人は効果を享受できます。

肺炎球菌ワクチンの定期接種
定期接種は平成26年より開始されました。当時65歳の高齢者が対象ですが、更に高齢の方々にも1回は接種する必要があります。
そこで、毎年65歳の方に加え、5歳刻みで年齢を加算した方々も対象者とする規定となっています。
平成30年までの5年間で、一通りの高齢者が接種できる計算になります。
詳しい対象者の規定は下記の通りになります。
・対象者は 65歳の者
・60歳以上65歳未満の者であって, 心臓, 腎臓もしくは呼吸器の機能の障害またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を有するものとして厚生労働省令で定めるもの
・2023年度までの経過措置として、「65歳の者」とあるのは「65歳, 70歳, 75歳, 80歳, 85歳, 90歳, 95歳または100歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある者」とする
※接種率が低いため、2023年度まで経過措置期間が延長されました。
それ以降は満65歳の方のみが対象となりますので、忘れずに接種しましょう。
勿論、忘れた場合でも「任意接種」は可能です。公的補助は受けられませんので、全額自己負担となります。

