サルコペニアの定義と診断
サルコペニアは、「高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」と定義されます。また特に注意を要するサルコペニア肥満という状態があります。
サルコペニアと肥満もしくは体脂肪の増加を併せ持つ状態のことで、サルコペニアが示す四肢骨格筋量の低下(身長の 2 乗または体重で補正)とBMI 、肥満の状態を示す体脂肪率またはウエスト周囲長の増加を合わせて定義されます。
サルコペニア肥満の人はサルコペニアのみ、または肥満のみの人に比べて生活機能低下、転倒・骨折リスク、死亡リスクが増加すると言われています。

サルコペニアの要因と危険因子
サルコペニアは、加齢が最も重要な要因なのですが、その他に、活動不足、疾患(代謝疾患、消耗性疾患など)、栄養不良が危険因子となります。
サルコペニアの予後と転帰
サルコペニアでは転倒、骨折、フレイルとなるリスクが高くなります。サルコペニア肥満では脂質異常症となるリスクが高くなり、心血管疾患による死亡、総死亡のリスクも高くなります。また、サルコペニアを合併すると癌患者さんの生存率が低下してしまいます。更に、サルコペニアを合併すると手術の死亡リスクが高くなります。
サルコペニアの予防
適切な栄養摂取、特に1日に(適正体重)1kg 当り 1.0g以上のたんぱく質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性があります。
(エビデンスレベル:低、推奨レベル:強)
運動習慣ならびに豊富な身体活動量はサルコペニアの発症を予防する可能性があります。運動ならびに活動的な生活が推奨されます。
(エビデンスレベル:低、推奨レベル:強)
高血圧、糖尿病、脂質異常症に対する治療薬、アンドロゲン薬、また糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性心不全、肝不全(肝硬変)に対する運動・栄養管理がサルコペニアの発症を予防する可能性はありますが、一定の結論は得られていないとのことです。
(エビデンスレベル:低、推奨レベル:弱)
サルコペニアの治療 サルコペニアを有する人への運動介入は、四肢骨格筋量、膝伸展筋力、通常歩行速度、最大歩行速度の>改善効果あり、推奨されています。
(エビデンスレベル:非常に低、推奨レベル:弱)
サルコペニアを有する人への必須アミノ酸を中心とする栄養介入は、膝伸展筋力の改善効果があり、推奨されています。しかしながら、長期的アウトカム改善効果は明らかではない様です。
(エビデンスレベル:非常に低、推奨レベル:弱)
サルコペニアを有する人へのSARM(selective androgen receptormodulator)を含む薬剤は、サルコペニアの改善に一部有効とされますが、現時点で承認された薬剤はない様です。
(エビデンスレベル:非常に低、推奨レベル:弱)
サルコペニア診療ガイドライン2017年版より
