亜鉛とは?
亜鉛は原子記号Zn。微量元素とも言われ生体に必須なミネラルです。生体内のミネラルの中で鉄の次に多い成分になります。各臓器に分布していますが、男性の精液にも多く含まれ、精力回復のサプリメントなどにもよく配合されることがあります。

亜鉛が欠乏すると!?
味覚異常
代表的な欠乏症として味覚障害があります。舌の細胞の中には亜鉛が多く含まれており、味を感じる細胞にある亜鉛含有酵素が味覚を感じるために重要な働きをしています。高齢者が味覚障害になるとフレイルになりやすいと言われています。フレイルとは、高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱になった状態をいい、「要介護予備軍」とも言えます。
皮膚炎
もう一つ、代表的な欠乏症として皮膚障害があります。皮膚の表皮には多くの亜鉛が含まれています。生体成分の構成要素であり、たんぱく質の合成等に関連した働きがあるため、亜鉛が欠乏することで皮膚が変化し、皮膚炎等の障害が引き起こされます。
脱毛
頭部全体から眉毛に至るまで脱毛する場合があります。皮膚障害から引き起こることに加えて、皮膚の毛包での亜鉛の働きと関連しているとのエビデンス情報があります。後ほど詳しく解説します。
性腺機能低下
特に男性の性腺の発達障害や機能不全が起こります。更年期ではLOH症候群(Late-Onset Hypogonadism;加齢男性性腺機能低下)と言います。男性ホルモンであるテストステロンの合成や分泌が減少します。性欲が減退(インポテンツ)したり、精子の形成阻害や運動機能低下にも関連します。男性不妊の一因となるようです。女性でも妊娠がしにくくなるという報告があります。

発達障害
小児で発達障害が起きます。身長が伸びず低身長になると言われています。成長ホルモンや男性ホルモンの分泌低下が関連するようです。
骨粗しょう症
亜鉛は骨形成に重要な働きをする酵素に多く含まれています。亜鉛酵素の分泌低下で骨が作られにくくなってしまいます。
下痢
皮膚と同じく消化管の表面にも亜鉛が多く分布し、機能しています。亜鉛が不足することで消化・吸収能力が低下し激しい下痢が起こることがあります。
亜鉛と脱毛の関連性
亜鉛が皮膚の毛包と表皮の形成に重要であるとの徳島文理大学の研究結果があります。「米国科学アカデミー紀要」電子版に掲載されました。皮膚の毛包亜鉛を輸送するトランスポーター「ZIP10」があります。ZIP10が欠損すると表皮の形成が著しく阻害され、毛の形成にも支障をきたすことが明らかとなったそうです。
若さの維持に必要な必須ミネラル
高齢化に伴う皮膚トラブル、脱毛、精力減退、といった現象は亜鉛が関連する可能性も少なくはありません。基本はしっかりとした食事による栄養補給ですが、補助的にサプリメントの使用も良いと思います。ただし、不足を補うことが重要であり、過剰摂取による障害の可能性もありますので、適量をしっかり確認して使用しましょう。

鉄(Fe) |
フェリチン(タンパク質)で貯蔵される。赤血球のヘモグロビンは鉄による酸素の運搬などを行う。レバー、シジミ、アサリ、ホウレンソウ、ヒジキ、ゴマ、海苔、パセリなどに多く含まれる。 |
亜鉛(Zn) |
インスリンをはじめとする様々な酵素に含まれる。免疫機能、味覚感知、成長、精子形成などを行う。牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、卵、納豆、牛乳などに多く含まれる。 |
銅(Cu) |
酵素などの銅タンパク質として存在し、電子伝達系、酸素輸送、ヘモグロビン合成などを行う。牡蠣、牛レバー、ロブスター、アボカド、グリーンオリーブ、ココア、黒コショウなどに多く含まれる。 |
クロム(Cr) |
インスリンの受容体と結合に関与し、糖代謝において重要な働きをする。レバー、エビ、ビール酵母、穀物、豆類、キノコ類、黒コショウなどに含まれる。 |
マンガン(Mn) |
骨の形成や代謝、消化機能に関与する。ショウガ、日本茶、シソ、シジミ、クリ、モロヘイヤ、納豆、パセリなどに多く含まれる。 |
セレン(Se) |
セレンシステインとして存在し、活性酸素からの防御機能の働きがある。抗酸化作用のある酵素、甲状腺ホルモンを活性化する酵素にも含まれる。かつおぶし、からし、牛肉、豚肉、タラコ、マグロはじめ各種魚類、ヒマワリの種などに多く含まれる。 |
モリブデン(Mo) |
酵素として存在し約20種類が知られている。窒素をアンモニアに変換するニトロゲナーゼ、尿素合成に関与するキサンチンオキシダーゼもモリブデン酵素の一つである。大豆等の豆類、米、ゴマ、落花生、豚肉などに多く含まれる。 |
ヨウ素(I) |
甲状腺ホルモンの合成に重要な微量全素。ワカメやヒジキなどの海藻類、卵、アワビ、タラコ、ウナギ、牡蠣、あさり、かつお節などに多く含まれている。 |